スクリーニング検査
不妊の治療に入る前に原因をさぐるための検査や、治療に必要な検査を行います。他院での検査結果は、参考にしますので持参してください。
基礎体温測定
基礎体温を継続して測定・記録し変動パターンを見ることで、月経周期の長さ、排卵の有無、排卵の時期、黄体機能の変化など様々な情報を得ることができます。おおまかな体温変動のパターンを見るだけでも参考になりますので、多少の変動は気にすることなく付けることを心掛けてください。不妊治療は基礎体温表を元に進めます。受診の際には忘れずに持参してください。
基礎体温の測定時間
基礎体温とは、体温上昇をきたすような活動のない状態の体温のことです。通常は朝目覚めた際、寝床から起きあがる前に測定することが理想的です。生活が不規則で、一定の時刻に安静を保った状態で体温を測ることが難しい方は、数時間でも睡眠を取った後に測定することでも参考になります。
淋菌/クラミジアPCR検査・クラミジア抗体検査
淋菌・クラミジア感染症は、卵管の閉塞による不妊症の原因の1つです。クラミジア感染の既往歴を調べます。卵管のみに感染している場合、PCR検査では確認できないため、抗体検査が必要です。
子宮卵管造影検査
子宮内部の形や状態、卵管が詰まっていないかを調べるための検査です。子宮の中に造影剤(X線で白く写る液体)を注入して子宮内、卵管に造影剤が入っていく過程をレントゲンで観察します。軽度の閉塞の場合、造影剤が通過するときに開通することがあります。検査と同時に治療になることがあるため、検査後数ヶ月は妊娠しやすくなると考えられています。
検査時の痛みについて
卵管に造影剤が入る時の圧力や子宮への刺激で、痛みを感じることがあります。特に卵管が狭くなっている、または閉塞している場合は、痛みを感じることが多いです。医師の指示により行う検査です。初診の日には行いません。
診断 | a. 卵管閉塞(卵管が詰まっている) 造影剤が閉塞している部分までしか到達できず、その先は写りません。 b. 卵管狭窄(卵管が狭くなっている) 造影剤の進みが悪くなります。 c. 子宮内腔を圧迫する子宮筋腫やポリープがある 筋腫やポリープのある部分の造影剤が写りません。子宮の形の異常(双角子宮など)もわかります。 d. 卵管水腫(卵管が閉塞して中に水が溜まっている状態) 卵管が太くなり、袋の様に写ります。 e. 卵管周囲の癒着 卵管から漏れ出た造影剤が広がっていく様子や、卵管が極端に引き延ばされた状態、またはコイリング(コイルを巻いたような状態)などから診断できます。正確な診断には、腹腔鏡での検査が必要です。 |
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風疹・麻疹抗体価検査
妊娠中に感染すると危険な風疹、麻疹は、治療開始前に抗体価検査をお勧めします。
妊娠中に感染するとどうなるの?
a. 風疹感染
妊娠初期に感染すると、ウイルスが胎児に感染し、高確率(20-50%)で「先天性風疹症候群(心奇形、眼の異常、聴力障害などの症状)」を引き起こします。妊娠中期・後期に感染すると、胎児の感染が生まれてからも持続し、「新生児風疹(出血傾向、肝・脾腫、骨の発達障害、精神発達遅延、脳性麻痺、骨髄炎などの症状)」を引き起こすことがあります。
b. 麻疹感染
風疹とは異なり、妊娠中に麻疹に感染しても胎児に先天奇形を生じる確率は低いですが、妊婦が感染すると妊婦自身も脳炎などに重症化し、流早産しやすくなります。抗体のない母親から生まれた新生児が1、2歳までに感染すると重症化することが多いです。
どうしたらいいの?
a. 過去に風疹・麻疹に感染したことがある人
抗体価を調べて「風疹」「麻疹」と診断された場合は、抗体を持っているため、問題ありません。診断が臨床症状だけによるものであれば、別のウイルスに感染していた可能性があります。その場合は、風疹・麻疹抗体価検査をお勧めします。
b. 感染したことはないが、風疹・麻疹のワクチンを接種したことがある方
ワクチンを接種しても抗体を獲得できない場合があるため、抗体価検査をお勧めします。
家族からの感染の危険を取り除いておくことも大切です
a. お近くの内科にご相談ください。
検査の結果、「抗体を持っていなかった」あるいは「抗体価が低かった」方には、ワクチン接種をお勧めします。ワクチンを接種した場合、2ヶ月間の避妊が必要です。受診後の治療をよりスムーズに行うために、当院受診前の検査およびワクチン接種をお勧めします。各自治体から検査、予防接種費用の補助が受けられます。詳細は各自治体HPを確認してください。
b. 当院での検査・ワクチン接種をご希望の場合
抗体価検査希望の旨を医師にお伝えください。約1週間で結果がでます。女性のワクチン接種は妊娠の可能性のない時期(基本的には月経中もしくは直後)に行います。ワクチン入手には1週間程かかります。希望があれば予めお伝えください。
アンチミューラリアンホルモン検査
卵巣予備能(卵巣に残っている卵子の数)を調べる検査です。検査結果はあくまで数の目安であり、卵子の質を示すものではありません。月経周期が整っていても、AMHが低下している場合があります。年齢や月経の状態にかかわらず、検査することをお勧めします。
測定時期 | 特になし |
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評価 | AMHの値が高すぎる場合は、多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。 |
ホルモン採血検査(月経中・高温相)
不妊治療で検査するホルモンとは、視床下部・脳下垂体・卵巣で作られるホルモンを指しています。ホルモンによって働く時期は異なるため、それにあわせて測定を行います。
脳下垂体から出るホルモン
a. FSH(卵胞刺激ホルモン)
卵胞期(月経~排卵の期間)に分泌されて、卵巣に働きかけ、卵胞を大きく育てるためのホルモンです。卵巣で作られる卵胞ホルモン(エストラジオール)がFSHの分泌を調整します。更年期に入り、卵巣の機能が低下するとエストラジオールを作る能力が衰えていきます。脳はそれを感知してFSHの分泌を盛んに行います。したがって更年期になると血中FSH濃度は上昇します。これは更年期症状を引き起こす原因の一つといわれています。
測定時期 | 月経開始3~5日目 |
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基準値 | 9mIU/ml以下(月経中の血中濃度) ※ 10mIU/ml以上の場合、卵巣の働きが低下している可能性があります。 |
評価 | 検査を行った周期の卵巣の働き(卵胞が順調に育って排卵する能力)や卵巣の予備能(卵巣に残っている卵子の数)を評価する指標の1つです。 |
より正確に卵巣の予備能を知るためにアンチミューラリアンホルモンを測定することをお勧めします。
b. LH(黄体化ホルモン)
排卵の24~36時間前からパルス状に分泌(LHサージ)されるホルモンです。LHサージが始まってから36~40時間、またはLHサージのピークから24時間で排卵するといわれています。検査によって、排卵の時期や多嚢胞性卵巣症候群の可能性の有無がわかります。
測定時期 | 月経中(採血)、排卵期(採血、尿の試験紙) |
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基準値 | LHがFSHより低い(月経中)。10mIU/ml未満 |
評価 | 月経中、LHがFSHより高い場合は、「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性があります。排卵が近づいたとき、尿の試験紙により排卵がわかります。 |
c. PRL(プロラクチン)
乳汁分泌に重要なホルモンです。また、細胞の増殖や機能に必須の因子であり、卵胞の発育や卵の成熟を促進すると考えられています。
測定時期 | 月経3~5日目 |
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基準値 | 30ng/ml以下 |
評価 | 妊娠中・授乳中以外で血中濃度が高すぎる場合は、高プロラクチン血症と診断します。高プロラクチン血症では、排卵障害や黄体機能の低下が起こるため、プロラクチンを下げる内服薬を処方します。血中濃度が低すぎる場合、ホルモンを分泌する下垂体の障害が明らかになることがあります。 |
d. TSH(甲状腺刺激ホルモン)
甲状腺機能のスクリーニングとして検査するホルモンです。甲状腺機能の異常には機能亢進症と機能低下症があります。特に機能低下症は不妊症や流産の原因になります。
測定時期 | 特になし |
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基準値 | 0.2~2.5μIU/ml |
e. 卵胞ホルモン(エストラジオール:E2)
卵胞から分泌されるエストロゲン、所謂女性ホルモンの代表です。子宮に働きかけて、排卵の準備をさせるホルモンです。
- 子宮内膜を厚くして、着床の準備をします。
- 子宮頸管から分泌される頸管粘液(おりもの)の量を増やします。
測定時期 | 月経周期の様々な時期 |
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基準値 | 月経中 20~80pg/ml 卵胞の成熟度を調べる時 排卵直前の卵胞1個につき約200pg/ml (例)排卵直前の卵胞2個の場合は約400pg/ml |
評価 | 基準値より低い場合は、卵巣機能が低下しているか、卵胞の発育がよくない可能性があります。 |
基準値より高い場合は、前の周期の卵胞が残っている可能性があり、今の周期の正常な卵胞の発育の妨げになることがあります。
f. 黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)
黄体(排卵後の卵胞)から分泌されるホルモンです。子宮内膜を変化させて、着床できる状態にします。卵胞の発育がよくないと排卵後の黄体ホルモン分泌が悪くなり(黄体機能不全)、不妊症になることがあります。
測定時期 | 高温相中期 |
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基準値 | 10ng/ml以上 |
評価 | 10ng/mlより低い場合は、黄体機能不全と診断します。 |
g. テストステロン(T)
卵巣から分泌される、いわゆる男性ホルモンです。
測定時期 | 月経3~5日目 |
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基準値 | 40ng/ml未満 |
評価 | 40ng/ml以上の場合は、「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性があります。 |
精液検査(男性パートナー)
不妊症の原因の約半数は、男性に原因があると言われています。精子が少なかったり、運動性が悪かったりすると妊娠が難しくなります。自覚症状があることは少ないため、精液の状態を調べることをおすすめします。
※ 女性パートナーが当院に通院している方に限り予約可能です。
予約
検査希望は女性パートナーの診察時に伺います。
※ 検査当日は、必ず検査を受ける方の保険証を持参してください。
検査前にお渡しする物 | |
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検査容器 | 容器内は滅菌してあります。汚染防止のため精液採取時以外は開封しないでください。 |
検査容器貼付用シール | 取り違え防止のため、男性パートナーの診察券番号、氏名(漢字フルネーム)、採取時刻を必ずご記入ください。 |
採取
a. 採取場所
原則自宅でお願いします。
b. 採取手順
正確な検査を行うため、採取手順に従い精液採取を行ってください。
・検査前3~5日程度、射精をしない期間を設けてください。
※ 運動率の低下などを引き起こすため、禁欲期間は1週間以内としてください。
・射精1回分、全量を直接検査容器に入れてください。
※ コンドームなどから移し替えないでください。
※ 精液は採取してから2時間以内に持参してください。
※ 精液を冷やしたり、温めたりしないでください。
ご不明な点はスタッフにお尋ねください。