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婦人科疾患の手術治療

婦人科手術実績

こちらからご覧いただけます。

内視鏡手術

婦人科内視鏡手術は、腹腔鏡手術と子宮鏡手術の2種類があり、小さな穴から手術を行い、傷が小さく侵襲が少ないため、早く退院し社会復帰できます。当院では、技術認定された医師が担当しています。
以下に、アルテミス ウイメンズ ホスピタルで行われた手術件数をご紹介した後、腹腔鏡手術と子宮鏡手術について説明し、婦人科内視鏡手術を適用する主な疾患--子宮筋腫、卵巣腫瘍、不妊症、過多月経--の検査と内視鏡手術について少し詳しい説明をします。

1. 内視鏡手術実績

アルテミス ウイメンズ ホスピタルで行われた婦人科内視鏡手術件数をご覧いただきます。

2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
<腹腔鏡手術>
 筋腫核出術 54 37 44 35 27 36 40
 卵巣嚢腫摘出術 41 48 53 30 36 40 38
 付属器摘出術 26 21 29 28 32 37 33
 異所性妊娠 2 3 0 4 3 3 3
 内膜症、癒着剥離術 1 0 2 0 0 1 2
  FT開口術 1 0 0 0 0 0 0
  卵管切除術 0 5 6 1 4 5 3
  卵管開口術 0 0 0 1 1 2 1
  卵巣多孔術 3 1 0 (1) 0 0 2
 腹腔鏡補助下子宮全摘術 10 13 28 23 27 26 35
 その他 4 3
<子宮鏡手術>
 内膜ポリープ 7 20 33 54 67 32 40
 子宮筋腫切除術 15 12 32 18 18 28 38
 子宮中隔切除術(腹腔鏡併用) 0 0 0 0 0 0 0
 子宮内膜焼灼術 2 0 0 (6) (7) 0 1
 その他 0 2 1
合計 162 160 231 199 215 210 237

2017年~2023年手術件数

2. 各種手術の解説

① 腹腔鏡手術
腹腔鏡の長所は、開腹に比べてトータルの傷の長さが少ないことと、術後の回復が早いことです。短所は、既往歴(今までの手術歴など)や腫瘍の大きさ、種類によって腹腔鏡の適応が限られること(全ての方が腹腔鏡で手術できるわけではないこと)です。

a. 概要

腹腔鏡手術では、臍部と下腹部に3~4箇所の穴を開けます(図1)。

腹腔鏡手術
(図1)

臍部の穴は臍の中に約20mm、下腹部に約5mmの穴を1~3か所となるので、開腹に比べて傷が小さくてすみます。手術中は、カメラでお腹の中を見る(図2)ために、お腹に中に炭酸ガスを流してお腹の壁(腹壁)を上に持ち上げます。手術時間は開腹術に比べて長くなりますが、術後の回復は早く、数日間で退院できます。


(図2)

子宮の周囲には腸管・膀胱・尿管等があります。これらの臓器が、炎症や内膜症により子宮にくっついてしまうことを癒着と呼びます。強い癒着があると腹腔鏡手術は施術できません。手術中に強い癒着のために腹腔鏡の操作が困難になったり、出血などで緊急な対応が必要になったりした場合は、開腹手術に変更しなければならなくなることがあります。摘出したものがある場合は、病理検査(顕微鏡で詳しく診断する検査)を行い、良性・悪性の診断をします。術後約2週間で結果が出ますので、必ず確認してください。

b. 術後の経過

患者様の術後経過によりますが、おおむね術後3日目に退院になります。退院後およそ1週間してから、外来で診察を受けていただきます。血性の帯下(おりもの)は退院後もしばらくみられますが、量の増加や腹痛、発熱がある場合は、翌日、婦人科外来で診察を受けてください。入浴・性交は、退院後の外来診察で許可があるまで控えてください。子宮筋腫の手術の場合は、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、子宮筋腫以外の疾患の手術では、1週間後と1ヶ月後に診察をして、問題なければ治療は終了です。

c. 腹腔鏡手術の合併
出血 出血により身体の血液が大量に失われると、心臓から送り出される血液や血管の中を流れる血液が不足して循環不全になり、全身に酸素が運べなくなり致命的な状態となります。そうならないように細心の注意を払って手術を行いますが、命に関わるような出血が起った場合には輸血が必要になります。あくまでも輸血の可能性があるということですが、いざ輸血が必要になった時には、麻酔のため患者様は意識がありませんので、説明や承諾を得ることができません。そのため、輸血については事前に説明し、承諾を頂いています。また、他人からの輸血を望まない方には、あらかじめ、ご自身の血液を採血して保存しておく自己血貯血をお勧めしています。
感染症 術直前・術後に抗生剤の投与を行い、感染を予防するように努めます。感染すると、熱が出て腹痛が起ります。稀ですが、お腹の中に膿がたまることがあり、再手術が必要なことがありあります。感染症が起ってしまった場合には入院期間が延びることがあります。
他臓器の損傷 癒着がある場合、子宮筋腫の位置や大きさによっては、癒着している臓器を子宮から剥離する(離す)必要があります。癒着が強いと剥離操作が困難になり、その過程において周辺臓器を損傷することがあります。その際には外科、泌尿器科などの専門的な処置が必要となります。
術後腸閉塞 手術後は一般に腸の動きが弱くて食事ができない状態にあります。手術後当日は点滴による栄養補給を行い翌日から食事を開始します。腸の動きを良くするために早期離床をおねがいしています。
下肢深部静脈血栓症
(血栓塞栓症)と肺塞栓症
血栓塞栓症は、手術で長時間同じ姿勢をとった際に、足の静脈の血流が悪くなり静脈の中で血液が固まってしまう状態です。エコノミークラス症候群として血栓塞栓症(肺塞栓症)が注目されたことにより、その重要性が認識されるようになりました。静脈血栓症予防のガイドラインに則り、脱水の予防、ストッキングの使用、間欠的空気圧迫法などにより予防します。患者様には早期歩行を励行していただきます。
術後の癒着 手術後には、子宮の傷の部分に腸管や卵管、卵巣等が癒着することがあります。これは、程度の差はありますが傷が治っていく過程で起ります。癒着しやすい体質の方とそうでない方とがいます。すべての癒着が防げるわけではありませんが、癒着防止のために特殊なシートを創傷面に貼付けます。
皮下気腫、空気塞栓 腹腔鏡では、カメラでお腹の中を見るために、お腹に中に炭酸ガスなどの気体を流してお腹の壁(腹壁)を上に持ち上げます。皮下気腫とは、そのガスがお腹の中だけでなくて、皮膚の下(皮下)に入り込んでしまうことをいいます。いずれは取れますが、しばらく痛みや腫れが残ります。空気塞栓とは流している気体が何らかの原因により血管の中に流れ込んでしまい、血管が気体で充たされてしまう状態をいいます。多量に流れ込むと心臓や肺に気体が溜ってしまい致命的になります。このような事態にならないように、全身の状態を常に監視しながら手術を進めていきます。

② 子宮鏡手術
子宮鏡手術の長所は、開腹術に比べて術後の回復も早く、多くは翌日に退院となり社会復帰できることです。短所は、適応となる腫瘍の大きさや位置が限られている事、子宮穿孔や出血などで緊急な対応が必要になった場合には、腹腔鏡や開腹手術に変更しなければならないことです。

a. ポリープ、筋腫の摘出

子宮鏡は子宮頸部から細いカメラを挿入し、子宮内腔を観察する機器です。機器には電気メスの装置がついていて、子宮内腔を見ながら電気メスで病変部分を削り、ポリープ、筋腫を摘出します(図3)。


(図3)

内腔に癒着がある場合にはメスで癒着部分を剥がします。子宮内腔を見やすくするために、環流液を流しながら手術を行います。子宮筋腫の場合、大きさや位置によってはすべて取り切れないことがあります。その場合には追加の治療が必要かを判断し、日を改めて再手術するか、そのまま腹腔鏡、開腹手術に移行します。

b. 手術後

多くは、術後翌日に退院となります。退院後に腹痛や発熱がみられた場合は、翌日に婦人科外来で診察を受けてください。術後の入浴・性交は、退院後の外来診察で許可されるまで控えてください。術後の方針については患者様によってそれぞれことなりますので、医師より説明を聞いてください。

c. 子宮鏡手術の合併症
出血 子宮鏡の手術では基本的にほとんど出血はありません。ただし、出血により身体の血液が大量に失われると、心臓から送り出される血液や血管の中を流れる血液が不足して循環不全となり、全身に酸素が運べなくなり致命的な状態となります。そうならないように細心の注意を払って手術を行います。
感染症 術中・術後に抗菌剤の投与を行い、感染を予防するように努めます。感染すると熱が出て、腹痛が起こります。感染症が起ってしまった場合には入院期間が延びることがあります。
子宮穿孔 子宮筋層の薄くなっているところなどをメスで削った場合に、時に穿孔を起こすことがあります。傷が小さい場合には入院安静ですみますが、傷が大きい場合には腹腔鏡、開腹をして修復する必要があります。
子宮穿孔による他臓器の損傷 子宮の周囲には腸管・膀胱などがあります。子宮穿孔の際に周辺臓器を損傷することがあります。その際は開腹の上、外科的な処置が必要となります。
下肢深部静脈血栓症
(血栓塞栓症)と肺塞栓症
血栓塞栓症は手術で長時間同じ姿勢をとった際に足の静脈の血流が悪くなり、静脈の中で血液が固まってしまう状態です。エコノミークラス症候群として血栓塞栓症 (肺塞栓症) が注目されたことにより、その重要性が認識されるようになりました。肺塞栓症が起ると致命的になります。静脈血栓症予防のガイドラインに則り、脱水の予防・ストッキング・間欠的空気圧迫法などにより予防を行います。患者様には早期歩行を励行していただきます。
術後の癒着 手術後に組織の修復過程において、子宮の内腔が癒着することがあります。手術中の判断で予防のためにリングなどを子宮内に約1ヶ月間装着することがあります。
環流液による
腹水の貯留、水中毒
子宮の内腔を観察するために環流液を流す必要があります。環流液は通常は子宮から腟の方に排出されますが、一部は卵管を通って腹腔内に漏れます。手術が長時間に及んだ場合などで、多量に腹腔内に溜まりますと水中毒をおこすことがあります。使った環流液の量に注意しながら手術を進めていきます。もし、多量に腹腔内に漏れるようでしたら完了前でも手術を終了することがあります。

③ 子宮筋腫
子宮筋腫は、出産適齢年齢の女性の20%~50%に超音波検査で指摘されており、過多月経(月経量が多いこと)、月経痛やお腹の張りなどの症状があり診断される場合と、本人にはまったく症状がなく偶然に検査で発見される場合があります。

a. 治療の適応

出産適齢年齢の女性の20%~50%というと、非常に多くの女性が子宮筋腫を持っていることになりますが、多くの方は治療の必要はありません。ただし以下の場合には治療をお勧めします。

症状がある場合 子宮筋腫が引き起こす可能性がある症状としては、過多月経・下腹部痛・腰痛・頻尿などがあります。診察後、治療により症状が軽減すると判断できる場合は治療をお勧めします。
サイズが手術に適応の
大きさである場合
特に症状が無い場合も 5、6cm以上の大きさがあり、今後さらに大きくなることが予想される場合、腹腔鏡手術適応のうちに(できれば10数cm以下のうちに)手術をおすすめします。
妊娠に不利である場合 医学研究は、筋腫の有無が妊娠率へ大きく影響することを示しています。不妊症の患者様の受診後の経過を調べた研究によると、筋腫があった方の妊娠率は11%で、筋腫のなかった方の25%を下回りました。子宮を残して筋腫だけを摘出することを”核出”と言いますが、筋腫を核出すると42%の方が自然に妊娠しました。私どもの研究でも、筋腫核出した方のおよそ半数は、1年以内に自然に妊娠しています。もちろん、筋腫の位置や数、大きさにより妊娠率への影響は異なりますが、不妊症に筋腫が合併している場合は、筋腫の摘出をお勧めしています。特に、以下に該当する筋腫は不妊の原因であることが多いと考えられます。
  • ① 過多月経や圧迫症状を有しているもの
  • ② 内腔の拡大、変形をきたしているもの
  • ③ 卵管の圧排、変異が予想されるもの
  • ④ ほかに不妊原因がない場合で、大きさが5cm以上であるもの
  • ⑤ 以上に該当せずとも、妊娠経過に悪影響を与えると思われるもの
b. 子宮筋腫の際に必要な検査

問診、超音波検査により子宮筋腫を考え治療が適当であると判断した場合、悪性の可能性をできるだけ否定するため、MRIと生化学検査(血液検査)を行います。

c. 私たちが行っている治療法
腹腔鏡下子宮筋腫核出術 腹腔鏡を使用し、子宮筋腫を摘出した後その傷を縫合します(図4)。手術後は子宮の傷が治癒するまでに、最低でも約3ヶ月間の避妊期間が必要です。(腹腔鏡手術の項目を参照してください)。
(図4)
腹腔鏡下子宮筋腫核出術 お腹の中で核出した大きな筋腫はそのままでは体の外に出すことができません。以前は電動モルセレーター(リンゴの皮むきの様にお腹の中で筋腫を小さくする器械)を使っていましたが現在は使用していません。まずお腹の中に専用の袋を入れてその中に核出した筋腫を集めます。そしてお臍の穴から少しずつメスで粉砕して体外に摘出しています。この方法により粉砕破片が飛び散らないという安全性のメリットが生まれました。
腹腔鏡下子宮全摘術 腹腔鏡下に子宮全体を摘出します。今後妊娠を考えていない場合は選択の一つになります。手術後は腟の傷の保護のため、約3ヶ月性交渉を控えていただきます。
子宮鏡下子宮筋腫核出術 子宮の内腔・内側にある筋腫の場合、お腹に傷を作らずに筋腫を摘出する事が可能です。(子宮鏡手術の項目を参照してください)。
子宮鏡下子宮内膜焼灼術 過多月経という症状改善のために行います。(子宮鏡手術の項目を参照してください)

④ 卵巣腫瘍
卵巣腫瘍には、袋状の「のう胞性(のう腫)」と「充実性」に大別され、超音波検査などにより判定されます。卵巣のう腫の多く(約85%)は良性ですが、残りのものには悪性の可能性が疑われます。

良性卵巣のう腫には、子宮内膜症性のう腫(チョコレートのう胞)や、脂肪・髪の毛・骨や歯・時には皮膚の一部が詰まった奇形腫(または皮様のう腫)、また液体の性質による漿液性、粘液性等、多くの分類があり、超音波検査だけでは充分な診断はできません。卵巣のう腫を認めた場合は腫瘍マーカーを採血で調べたり、MRI検査を行ったりして悪性の可能性を否定する必要があります。

a. 手術適応

日本産科婦人科学会やヨーロッパが中心のESHREという学会でも、4cm以上の場合は手術を推奨しています。子宮内膜症性のう腫と診断されても安心はできません。がん化する可能性があるからです。サイズが大きくなるにつれ、卵巣がんが発生する可能性が高まります。40歳以下であればがんの可能性は1%前後ですが、大きければ手術をお勧めします。また6cm前後まで大きくなると、腫大した卵巣がお腹の中でねじれてしまい、卵巣を養うために送られていた血液が来なくなる事によって、卵巣が壊死(細胞が死んでしまう)することがあります。これを卵巣茎捻転と呼びますが、急激に強い腹痛が始まり緊急手術が必要です。卵巣のう腫の大きさと治療の方向は以下のとおりです。

4~6cm 腹痛・月経困難などの症状がなければ定期的経過観察をします。妊娠を希望する場合は妊娠を優先してもかまいません。
6cm以上 悪性の可能性の上昇、卵巣茎捻転の可能性の上昇により手術をおすすめします。
b. 卵巣のう腫の際に必要な検査

問診・超音波検査等により卵巣のう腫と診断した場合、悪性の可能性をできるだけ否定するため、造影MRIと腫瘍マーカー検査(血液検査)を行います。確定診断は手術でのう腫を取出し病理検査を行って決定しますので手術後ということになります。

c. 手術法
卵巣腫瘍摘出術 卵巣から腫瘍の部分を摘出し、正常な卵巣(の中の卵子)を残す方法です。女性は生まれたときには卵子を作ってしまっていると考えられており、そのためできるだけ正常な部分を残して腫瘍のみを摘出する事を考えます。しかしながら手術をする事により正常な部分が取れてしまったり、血流が低下する事により機能が低下(卵子数の減少=卵巣予備能の低下)することは0%とはいえません。他の腫瘍よりも子宮内膜症性のう胞であったり、両側性であったり、一度手術をされた事がある再発の方などはより卵巣予備能が低下するといわれています。よって手術療法のメリット・デメリットを十分に検討する必要があります。
付属器摘出術 卵巣と卵管をまとめて付属器と呼び、卵巣ごと摘出する事を付属器摘出といいます。卵巣には大事な卵子が入っていますが、卵巣が残るという事は腫瘍の再発や新しく腫瘍ができる可能性も残ります。積極的に妊娠を望まない年齢である方には、相談の上、付属器摘出をお勧めする場合があります。
(図5)

⑤ 不妊症
子宮卵管造影検査で異常が見つからないのになかなか妊娠しない場合、また卵管の通過性に異常が認められる場合に腹腔鏡を用いた治療をお勧めする事があります。卵管周囲癒着剥離や卵巣多孔術などは、腹腔鏡用器具の直径がより小さい(5mm→3mm)もので行う事が可能になるため、傷もさらに小さく手術翌日に退院可能です。

a. 卵管周囲癒着剥離

卵管が子宮、お腹の壁(腹膜)、腸などに癒着していると、卵管の通過性があっても排卵した卵子を自由に卵管に取り込んだり、スムースに胚を子宮に運べなくなることがあります。子宮卵管造影検査で癒着を疑ったり、なかなか自然に妊娠しない場合、腹腔鏡でお腹の中を観察の上、癒着を剥離することができます。

b. 卵管開口術

子宮卵管造影検査などで卵管閉鎖が認められた場合、開口術を検討します。ただし、体外受精を考えている方には必ずしも必要ではありません。両側性卵管水腫と診断された場合、残念ながらそのままでは妊娠は期待できません。卵管水腫の場合は卵管の端を切開し内側からきれいな卵管采を露出できれば自然妊娠を期待することが可能です(図6)。


(図6)
c. 卵管鏡下卵管開口術

子宮卵管造影検査などで卵管の近位端(卵管の子宮側)の閉塞が疑われる場合、さらに細い0.6mmの内視鏡を子宮内腔より挿入して卵管開通を図ることが可能です。

d. 多嚢胞性卵巣症候群に対する卵巣多孔術

排卵誘発に抵抗を示すコントロール困難な排卵障害を持つ多嚢胞性卵巣症候群の方に対しては、卵巣多孔術をお勧めします。腹腔鏡で直接卵巣を観察しながら電気メスで穴を開けることにより、排卵しやすさの改善を期待できます。

⑥ 過多月経
過多月経とは「月経血の量が異常に多いもの(日本産婦人科学会)」とありますが、月経血が多く生活に支障を来す場合、または月経血が多いために貧血になっている場合には治療が必要になります。月経血が多いかどうかはなかなか判りにくいのですが、夜用のナプキンを、日中に頻繁に換える必要がある方は相当多いと考えます。

a. 原因
機能性 特に病気は無いのですが、ホルモンのバランスの乱れなどにより大量の出血をみることがあります。
粘膜下筋腫 子宮筋腫筋腫が子宮という袋の内側(内腔)に飛び出していたり接している場合、粘膜下筋腫といい、1cmでも過多月経の原因になることがあります。
子宮腺筋症 子宮内膜症の病変が子宮筋層にできて子宮が大きくなった状態です。多くは月経困難を伴います。
子宮内膜ポリープ 子宮の内腔にできたポリープで、症状がない場合には経過を見るだけですが、過多月経・不正出血の原因となる場合があります。
b. 治療法

過多月経、不正出血の原因として悪性の可能性がないかを経腟超音波検査で確認し、子宮内膜が厚くなっている場合は内膜細胞診等で悪性を否定した上で、以下の選択肢から治療法を選択します。

ピル いわゆる経口避妊薬です。経口避妊薬を服用する事により月経が軽くなる事が期待できます。肥満・タバコ、年齢によっては血栓塞栓症のリスクが高くなりますので、使用をお勧めしない場合もあります。
黄体ホルモン療法 血栓症のリスクが高くピルが使えない場合でも黄体ホルモン単独の使用は可能です。ピルは黄体ホルモンと女性ホルモンの混合剤ですが女性ホルモンを含まない黄体ホルモン単独の使用によって血栓症のリスクを避けながら過多月経や月経困難を治療することが可能です。
IUS(子宮内避妊システム) 子宮の中に避妊を期待して装着する器具の中で過多月経・月経困難を低減させるものがあります。子宮の内側が変形しているような筋腫がある場合には適応にはなりませんので診察により判断します。
腹腔鏡下子宮筋腫核出術
子宮鏡下子宮筋腫核出術、
子宮内膜ポリープ摘出術
子宮鏡下子宮内膜焼灼術 月経とは、子宮の内膜を剥がれて次の妊娠に備える現象ですが、子宮内膜が全て剥がれているのではなく、基底層という薄い膜を残して剥がれます。その後、女性ホルモンが上昇すると子宮内膜は基底層から再び厚くなり、妊娠に備えます。そこで基底層を熱などで焦がすことにより女性ホルモンが上昇しても子宮内膜はほとんど育たなくなり、結果として月経量が減少し月経痛の低減も期待できます(図7)。しかし、この治療により子宮内膜は育たなくなりますので妊娠を期待する方にはお勧めしません。
図7(図7)